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[vol.7]日本海で起こる地震の予測と防災

三洋化成ニュースNo.550

[vol.7]日本海で起こる地震の予測と防災

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2026.01.16

鎌田 浩毅

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日本海に集中する「ひずみ」が巨大地震を引き起こす

2024年元日に起こった能登半島地震では、日本海の海底で長さ150kmに及ぶ震源断層が割れ、犠牲者648人に及ぶ大災害となりました。この震源断層の位置は「日本海東縁ひずみ集中帯」と呼ばれる変動域の西端にあります(図)。今回は日本海で地震や津波を引き起こす現象について解説します。

図:「日本海東縁ひずみ集中帯」で起こった地震の震源(筆者作成)

日本列島の地下では4枚のプレート(岩盤)がひしめき合っており、世界屈指の変動帯を形成しています。海のプレート(太平洋プレートとフィリピン海プレート)が、陸のプレート(北米プレートとユーラシアプレート)の下に沈み込むことによって、2011年の東日本大震災をはじめとするマグニチュード(M)9クラスの海溝型巨大地震を引き起こしてきました。

プレートの沈み込みは、日本列島に対しても水平方向の圧力を加え、岩盤の弱い箇所で破断を起こすことで、直下型地震を繰り返し発生させてきたのです。日本列島が受けたストレスは、GPS(全地球測位システム)を用いてcm単位の地殻変動として観測されています。その結果、日本海に沿って長さ1000kmの「ひずみ」が集中する領域があることが2000年に判明しました。

「日本海東縁ひずみ集中帯」海底では、中央部に北米プレートとユーラシアプレートの衝突境界が通っており、南北方向の褶曲しゅうきょくや断層などの地殻変動を表す地形が確認されています(図)。褶曲は、地層に横から大きな力が掛かった時に、地層が波状に曲げられ、変形する現象です。断層は圧縮力によって岩盤が割れることで起こる「逆断層」で、能登半島地震の震源断層も同じ北西―南東方向に傾斜した逆断層型でした。

 

日本海の地震活動の特徴

プレートの境界では、1940年の積丹しゃこたん半島沖地震(M7.5)、1964年の新潟地震(M7.5)、1983年の日本海中部地震(M7.7)、1993年の北海道南西沖地震(M7.8)、2007年の新潟県中越沖地震(M6.8)などの地震が多発し(図)、津波が日本海沿岸に到達しています。なかでも、北海道南西沖地震で奥尻島を襲った津波は高さ29mまで遡上そじょうし、死者・行方不明者229人を出したのです。

東京大学の佐竹健治名誉教授は能登半島北側の海底活断層が大きくずれることで本震M7.6のエネルギーを解放したことを明らかにしました。一方、北東側の佐渡島に近い海域にある「NT2」(全長36km)と「NT3」(同20km)と呼ばれる活断層がまだ動いていないのです。

この領域では、本震の8日後にM6.1の地震が起こっており、今後ここでM7クラスの地震が起こると新潟県の沿岸を高さ3mの津波が襲う恐れがあります。ちなみに、「日本海東縁ひずみ集中帯」で過去に発生した津波は、陸上までの到達時間が短い傾向があるため、厳重に警戒してほしいと思います。今後は太平洋側と同様に、日本海で起こる地震・津波を早急に評価し、防災対策を立てる必要があるのです。

 

日本海側は太平洋側のバックアップ拠点に

日本海側の防災は近未来の日本全体の課題とも密接に関わっています。日本列島では南海トラフ巨大地震、富士山噴火、首都直下地震という国家の存亡に関わる危機を控えています。すなわち、2035年±5年に発生が予想できる南海トラフ巨大地震、それによって誘発される富士山噴火、またいつ起こっても不思議ではない首都直下地震ですが、いずれも太平洋側を襲う激甚災害です。

その一方、太平洋側に比べると日本海側での防災意識は決して高くないのです。2024年の能登半島地震はまさに不意を突かれた状況で、日本海側では太平洋側と性質が異なる災害状況になる事実を突きつけられました。
今後は、能登半島の東側から北へ延びて新潟・秋田・北海道沖を通る「日本海東縁ひずみ集中帯」で起こる地震・津波に警戒し、太平洋側と同様の発生予測と防災対策に注力する必要があるのです。

また、南海トラフ巨大地震は太平洋側に壊滅的な被害をもたらしますが、その救助とバックアップ地域として、日本海側の自治体が重要な拠点となることが期待されています。従って、この地域のインフラなどを早急に整備し、激甚災害の発生前に人や物や情報をできるだけ分散させておく必要があるのです。それが2030年以降に確実に起こる激甚災害の被害を少しでも軽減するためにとるべき喫緊の政策課題でしょう。

 

鎌田 浩毅〈かまた ひろき〉

1955年東京都生まれ。京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。専門は、地球科学・火山学・科学コミュニケーション。東京大学理学部地学科卒業、理学博士(東京大学論文博士)。京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て現職。著書に『大人のための地学の教室』『みんなの高校地学』『知っておきたい地球科学』『M9地震に備えよ』などがある。2025年に第54回ベストドレッサー賞(学術・文化部門)を受賞。

 

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