MENU

化粧品用水系増粘剤(レオロジーコントロール剤)

三洋化成ニュース No.523号

化粧品用水系増粘剤(レオロジーコントロール剤)

2020.11.16

Beauty & Personal Care
研究部
阪口 幸矢佳

[お問い合わせ先]
Beauty & Personal Care 統括部
Beauty & Personal Care CX部

 

PDFファイル

 

化粧品は肌を美しく清潔に保つ、アンチエイジングなどの目的で使用されている。これに加え、使用しやすくしたり、精神的に心地良い感覚を演出するためにさまざまな成分が配合されており、増粘剤もその一つである。増粘剤は化粧品の粘性(とろみ)を増やす成分で、化粧品の外観や使用感覚に大きく影響を与えるキーマテリアルである。

また、SDGs(持続可能な開発目標)がグローバルトレンドとなっている昨今、化粧品業界でも、地球・環境にも優しく、サスティナビリティに配慮した製品が求められている。このトレンドは図1に示すようにオーガニック・ナチュラルコスメの市場が拡大していることからもわかる。

 

 

オーガニック・ナチュラルコスメは当初、消費者の「ナチュラルやオーガニックが好き」という漠然とした感覚に基づいていた。しかし、今は世界各国が共通の目標として取り組み始めているサスティナブルな社会の実現に向けた動きから消費者の環境への意識が大きく変化し、「環境」や「企業倫理」は「価格」や「機能」と同様に化粧品を選ぶ際の選択基準になっている。今では環境への負荷を低減させるため、化粧品に環境へ配慮した素材・原料を使用するのはもちろんのこと、パッケージにも採用され始めている。このような背景から植物由来原料を使用した素材は注目アイテムの一つである。

本稿では、植物由来原料を一部使用した水系増粘剤について紹介する。

 

水系増粘剤

化粧品は機能付与と感覚の演出のためにさまざまな成分が配合されており、その構成要素は水、油性成分、界面活性剤など多岐にわたる。表1に構成成分とその配合目的を示す。化粧品の原料を大きく分類すると、化粧品のベースを構成するのに必要な基剤原料、生理活性や効果を訴求するための薬剤原料、製品の品質を保つのに必要な品質保持原料、色や香りに関連する官能的特徴付与原料に分けられる。

 

 

化粧品に増粘剤を配合すると私たちはどう感じるのだろうか。とろっとした液体はリッチな感覚を、プルっとしたゲルはみずみずしい感覚を演出する(感覚面)。また、適度なとろみがあることで垂れ落ちを防ぎ皮膚に塗りやすくなるのに加えて、塗布後の保湿効果付与や乳液などのエマルション*を安定化させる効果もある(機能面)。増粘剤は感覚面においても機能面においても、非常に重要な役割を果たしている。

*エマルション:水・油などの混じり合わない液体の一方が、もう一方に分散している状態。2種類の液体の性質を併せ持つため、1液系では得られない高付加価値の製剤をつくりやすい。

化粧品はさまざまな原料から構成されているが、大きく分けると水ベース、オイルベースなどの溶液・ゲルタイプ(例えば、化粧水など)と乳液やクリームのような乳化タイプがあり、乳化タイプのうち、水が油分を取り囲む「O/W乳化」と油が水分を取り囲む「W/O乳化」がある(図2)。増粘剤のうち、水(水相)に溶解、分散させて水相の粘性を調整するものを水系増粘剤といい、オイル(油相)に溶解、分散させて油相の粘性を調整するものをオイル増粘剤という。

 

水系増粘剤の具体例を表2 に示す。化粧品の水系増粘剤は、古くは多糖類などの天然高分子が使用されてきたが、その増粘効果は低く、粘度を向上させるためには多量に配合する必要があるうえに、べたつきというマイナスの感覚が残る課題があった。

 

 

 

その後、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(アクリル酸Naクロスポリマー)、カルボキシビニルポリマー(以下、カルボマー)などの合成高分子である水系増粘剤が開発された。ポリアクリル酸骨格を有するこれらの水系増粘剤は少量でみずみずしいゲルをつくることができるが、べたつき感が残るという問題は十分に解消されなかった。

また、環境へ配慮するという観点から天然由来素材を含むべたつきの少ない水系増粘剤が望まれてきた。

 

三洋化成の水系増粘剤『サランジュール』

当社では、植物由来原料を一部使用した増粘剤『サランジュール』を上市している。化粧品や医薬部外品に使用する際の表示名称を表3に示す。

 

 

 

外観は白色の粉末状であり(図3)、粒子径とデンプン含量の違いにより表4に示すようなラインアップがある。肌なじみが悪いものは塗布し続けても肌に浸透する感覚がしないが、『サランジュール』は肌なじみに優れ化粧品を塗布した後に肌に浸透する感覚や、べたつきが少ないという特長を化粧品に付与することができる。

 

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。
また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

ジェルクリーム(表5)において『サランジュール』を使用した場合と従来の増粘剤であるカルボマーを使用した場合での官能評価結果を図4に示す。従来品配合ジェルに比べて『サランジュール』配合ジェルは肌なじみ、さっぱり感、とまり、皮膜感、べたつき感全ての項目において優れている。

 

 

 

これらの項目は図5に示すように『サランジュール』の粒子径、デンプン含量でコントロールすることができる。

 

 

粒子径で官能をコントロールする仕組みを図6に示す。

 

 

完全に水に溶解する多糖類などはべたつきを感じるが、『サランジュール』は水に対し溶解ではなく、膨潤により増粘する。このため皮膚に接する面積が少なくなりべたつきの低減効果が高い。また粒子径を調整することにより、さらさら感、さらにはクラッシュゼリー感などの特殊な使用感を演出することが可能となる。さらに『サランジュール』は塩を含むと粘度が低下する性質があり(図7)、この性質により、水で膨潤した『サランジュール』は肌の上で汗由来の塩が作用することにより水を放出するため、みずみずしさを付与させる効果が非常に高い。

 

 

では、デンプンは官能をコントロールするうえでどんな役割を果たしているのだろうか。デンプンが水に不溶であるという性質が鍵となっている。デンプンは水に溶けないため、肌の上で化粧品を塗布した時に、少しパウダリー感のある液として存在する。この液体ではなく少し固体として感じる感覚を人はさらさら感があり、肌なじみが良いと感じる。このさらさら感は数字としても表すことができ、図8に示すように、数字が大きいほどさらっとした感覚を意味するn(H-B指数)が『サランジュール』では0.40、デンプンを含まない増粘剤では0.38、多糖類では0.085 であり、『サランジュール』は従来の増粘剤と比べてn が高い。

 

また『サランジュール』は簡単に化粧品に配合できるという特長もある。従来の増粘剤は水に溶解する際に、増粘剤が水になじまずダマが残り、完全に溶解するのに時間がかかるという課題がある。一方『サランジュール』は水への分散が容易であり、従来品に比べ、より簡単に膨潤液を得ることができ(図9)、プロピレングリコールなどのポリオール類を併用することでさらにスピーディーに膨潤液が得られる。

 

 

また、ポリアクリル酸骨格を有する増粘剤は中和工程が必要であることが多いが、『サランジュール』は中和工程が不要で工程短縮の面もメリットの一つといえる。

 

今後の展開

サスティナビリティに配慮した化粧品素材のニーズは今後ますます拡大し、原料面では天然由来素材、高い生分解性を示す素材が求められると考えられる。また性能面においては、幸せな気分になれるなどの心理的満足感を得ることができる、今までにないユニークな素材が求められると考えられる。当社は今後もこれらのニーズに対応した化粧品素材の開発を進めていく。

最新記事Latest Article

PAGE TOP