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水環境負荷低減に活躍する薬剤

三洋化成ニュース No.531号

水環境負荷低減に活躍する薬剤

2022.03.17

インダストリアル事業本部 研究部 環境研究グループ

ユニットチーフ 林 美有紀

[お問い合わせ先]
インダストリアル事業本部 営業部

 

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水は我々の日常生活だけでなく、産業活動においても必要不可欠なものである。人類が利用できる水は有限で貴重な資源で、水域生態系の保全のためにも水環境を良好な状態に保つことは重要な課題である。その課題解決の中核となる方策の一つが排水処理であり、水環境への負荷を低減するため、排水にはこれまで以上に厳しい環境基準が求められている。一方で、人口増加や経済発展に伴い、水の使用量は今後も増加すると予想されており1)、2)、排水処理能力の向上や、よりクリーンな処理技術の確立、排水を適切に処理して循環利用する技術の向上などが求められている。

本稿では、当社が開発中の溶解性COD(化学的酸素要求量)成分処理薬剤を中心に、水環境負荷低減に活躍する薬剤について紹介する。

排水処理について

一般家庭や工場から排出される排水には、さまざまな種類の汚濁物が含まれており、そのまま川や海に流すと生態系に影響を与えるだけでなく、飲み水などの水質にも影響を与える。そのため、一般家庭から出る都市排水は下水処理場で、工場で発生する産業排水は各工場の水処理施設などで浄化処理が施されてから放流される。放流に際しては、各国が排水中の無機・有機物に関して超えてはいけない基準値を定めており、定期的にモニタリングされている。

排水中に含まれる汚濁物には、プラスチックくず、顔料、バクテリア、タンパク質、界面活性剤やさまざまな分子など、有機系のものから無機系のもの、溶解しているものからしていないものまでさまざまな物質があり、対象汚濁物の種類や性質および処理目標に応じた処理技術が選定される。排水の処理技術は、物理的処理、化学的処理、生物的処理に大別されるが、複数の処理技術が組み合わされて用いられることがほとんどである。処理対象物質の大きさに着目した処理技術を図1 に示す3)

 

 

一般的な排水処理フローでは、一次処理として、懸濁物質(SS)、油脂分、分子量の大きい有機物質などの懸濁物の表面荷電を、無機凝集剤や有機凝結剤で中和して小さな凝集体(フロック)にする。さらに高分子凝集剤を用いて架橋・吸着し、フロックの塊を大きくした後、沈殿分離する。この過程では、除去対象となる懸濁物の表面電荷やサイズに応じて、高分子凝集剤にはさまざまな吸着性や反応性が求められる。

当社は高分子凝集剤用の原料として、水溶性、親水性、アニオン性化合物との吸着性や反応性など、多くの機能を有したポリマーを生成できるカチオン基含有モノマー『メタクリレート』シリーズを提供している(図2)。『メタクリレート』シリーズは、分子内に二重結合と第三アミノ基または第四アンモニウム基を有したアミノアルキルメタクリレート誘導体で、アミド系モノマーのため、耐加水分解性に優れている。この特長を生かし、高分子凝集剤のほか、製紙用薬剤、帯電防止剤、電気透析、逆浸透膜、イオン交換樹脂、紙力増強剤、顔料分散剤、化粧品原料としても使われている。

 

 

また、当社は高分子凝集剤として『サンフロック』シリーズも提供しており、汎用グレードから、酸性排水に効果的なNグレード、ベルトプレス脱水機で高い脱水効果を示すCグレード、無機凝集剤との併用で高い脱水効果を示すRグレードまで幅広く取りそろえている。

無機凝集剤や有機凝結剤、高分子凝集剤による凝集沈殿などの一次処理の後は、通常、微生物の生物化学的酸化反応を促す活性汚泥を用いた生物処理や膜処理が行われ、さらにそれまでの過程で除去できなかった物質を活性炭処理や酸化処理などで除去している(図3)。

 

 

溶解性COD 成分処理薬剤

排水汚濁の代表的な水質指標としては、生物化学的酸素要求量(BOD)やCODなどがある。特に自然環境で分解されない有機物はBODの数値として表れないため、CODの管理が重要視されている。CODなどの水質基準が今後ますます厳しくなってくる一方で、人口増加や経済発展により水使用量が増加し、排水中の汚濁物は多様化し難分解性物質が含まれるなど、排水処理には大きな負荷がかかっている。

近年幅広い分野での需要が増加している非イオン性界面活性剤や、ポリビニルアルコールなどは、高溶解性で非イオン性の有機物であり、排水の化学的処理が難しく、生物処理にも悪影響を与えるなど排水処理への負荷が大きい物質である。このような、溶解性CODの除去には、活性炭による吸着や、オゾン酸化、フェントン酸化といった酸化法による分解除去などが適用されているが、いずれも設備費や処理コストが高いといった問題がある。非生産設備である排水処理設備には、できるだけ低コストで効率よくCODを低減できることが求められており、特に、排水処理の整備が必要とされる新興国において、低コストの処理技術は必要不可欠である。

当社は、既存の凝集沈殿槽に投入するだけで、溶解性COD成分を不溶化し、排水のCOD低減に素早い効果を発揮する「溶解性COD成分処理薬剤(開発品)」の開発に取り組んでいる(図4)。比較的低コストで溶解性CODを低減できる新しいタイプの排水処理薬剤である。本開発品は、イオン性基を有する化合物〔ポリマー(処理剤A)と無機化合物(処理剤B)〕を組み合わせたもので、これらの相互作用により溶解性CODに選択的に作用し、析出させることができる(図5)。その様子を図6に示す。「溶解性COD成分処理薬剤(開発品)」で処理後に、可溶成分が析出・沈殿している。図7に示すように、アニオン性可溶成分、ノニオン性可溶成分ともにTOC(全有機炭素。水中の酸化されうる有機物の全量を炭素の量で示したもの)を5分の1以下にでき、成分を水中から除去できることがわかる。

既存の凝集・沈殿・加圧浮上の設備がそのまま使用でき、処理に特別なエネルギーを要しないためランニングコストも削減できる。手間もかからずCODを基準値まで低減することができ、処理能力向上、生産ラインの安定化が可能となる。

 

 

 

 

 

水中アルデヒド捕捉剤

排水にはさまざまな物質が含まれるが、石炭火力発電における脱硫排水中にはアルデヒド類が多く含まれる4)。また、ホルムアルデヒドは医療機器などの消毒剤や防腐剤として多用されていることから、これらの排水にホルムアルデヒドが含まれる5)。また、排水だけでなく、浄水処理時にホルムアルデヒドが生成した例もあり6)、当社は排水処理や水の循環・利用において、水中のアルデヒド類の処理に適用できる薬剤ができないかと考えた。開発中の「水中アルデヒド捕捉剤」は、水中でアルデヒド類と反応するポリマーで、効率的にアルデヒド類を低減することができると考えられる(表1)。

 

 

今後の展開

排水処理は、地球全体の水環境改善のため、今後は日本などの先進国だけでなく、まだ設備が整っていない新興国などへも導入が進むと予想される。当社は、さまざまなニーズに応えるソリューションを世界中へ提供し、水環境の改善、水資源の確保への貢献を目指していく。

 

参考文献
1)タクマ環境技術研究会編『基礎からわかる 下水・汚泥処理技術』
2)吉村和就著『最新水ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本』
3)和田洋六著『図解入門 よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み』
4)平賀由起、門脇巧、難波正徳「石炭火力発電所における脱硫排水中CODの低減対策」
5)張連峰、神吉達夫、浅野強、佐野紀彰、豊田淳「膜分離生物反応器におけるホルムアルデヒドを含む排水の処理特性」
6)東京都水道局 トピック第25回 浄水処理によるホルムアルデヒド等の処理
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/25.html

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