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溶剤を使わず瞬時に硬化させる機能

三洋化成ニュース No.525

溶剤を使わず瞬時に硬化させる機能

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2021.03.26

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「光硬化」の技術は、床材や家具などハードコート分野に始まり、電子部品でも広く活用されています。
そして近年、環境への配慮のため、脱溶剤を目指す塗料・インキ分野でも注目を集めています。
その光硬化にかかわる製品と技術を紹介します。

光を樹脂に照射し、重合を促す技術

光硬化とは、合成樹脂などの有機材料に光を照射することで重合を促し、硬化を図る技術です。光硬化を使って硬化させる物質を「光硬化樹脂」と言います。

光硬化はその重合方式によって「光カチオン重合」と「光ラジカル重合」に大きく分類されます。「光カチオン重合」は、紫外線(UV)を照射することで、光硬化樹脂内に含まれる光重合開始剤から酸(カチオン)を発生させて重合を促します。一方「光ラジカル重合」は、UVを照射することで、光硬化樹脂内に含まれる光重合開始剤からラジカルを発生させて重合を促すタイプと、より強力なエネルギーを持つ電子線(EB)を照射することで、モノマーから直接ラジカルを発生させて重合を促すタイプがあります。それぞれの特徴を生かし、用途に合わせて重合方式や、照射する光源を選択します。

 

光硬化樹脂を構成するモノマーには重合の起点となる「官能基」があり、この官能基同士が結びつくことで硬化します。モノマーの種類には、モノマーが1対1の関係で結びつく単官能モノマーと、二つ以上のモノマーが結びつく多官能モノマーがあり、結びつく部分が多い多官能モノマーほど硬化時の硬度が高まります。三洋化成は光ラジカル重合に使用する多官能モノマーとして『ネオマー』を1986年に発売。以降『ネオマー』などを用いた配合品である光硬化樹脂システム『サンラッド』も発売し、長年高い評価を得ています。

 

塗料・インキの脱溶剤化で注目される光硬化樹脂

光硬化樹脂は表面の硬化に優れるため、当初は床材などの建材や家具の表面処理などに用いられてきました。近年では、硬化時の変形が少なく、微細な加工が可能なことから、ディスプレイなどの電子材料にも広く活用されています。

 

一方で、これらの光硬化樹脂の技術は、環境などの観点から他分野でも導入が進められてきました。その一つが塗料・インキの分野です。塗料・インキの分野では、これまでもポスターやシールなど、光沢や発色が求められる比較的高級な印刷物などに用いられてきましたが、近年、世界的な脱溶剤化が進むにつれ、溶剤を使わない光硬化樹脂が改めて注目されるようになっています。三洋化成でも電子材料用材料の開発で培った技術を駆使して、同分野に光硬化樹脂システム『サンラッド』を展開すべく開発を行っています。

 

中国のVOC規制強化脱溶剤化の加速に対応

塗料やインキの中に含まれている有機溶剤は、揮発性有機化合物(VOC)の発生源の一つで、人体への影響や環境負荷の高い物質です。そのため同分野では、有機溶剤の使用を低減する取り組みが進められてきました。

 

まずは有機溶剤の中でも特に環境負荷の高いトルエン、キシレンを使用しない製品開発に始まり、有機溶剤の量を減らしたハイソリッド化や、有機溶剤を使わない無溶剤化、さらには有機溶剤の代わりに水を使う水性化が進められてきました。三洋化成も、水性塗料・インキをはじめ、これらに対応したさまざまな製品を開発・上市しています。

 

このような状況下、環境規制の取り組みが強まる中国では、大気汚染対策として、2020年12月から塗料に、2021年4月からインキに、新たにVOC含有上限などを細かく定めた国家強制標準規格が適用されます。塗料・インキの用途は幅広く、また本規格は、同時に接着剤・洗浄剤も対象となっており、多くの事業者に影響が及びます。また中国国内で生産、販売する製品だけでなく、日本で生産された塗料などを中国に輸出する場合も適用対象となるため、関係事業者には早急な対応が求められています。

 

そこで、水性塗料やインキに加え、無溶剤で美しく塗装・印刷ができる光硬化樹脂にも期待が高まっています。

 

SDGsに大きく貢献できる光硬化の技術

塗料・インキの分野では現状、脱溶剤化として水性化が主流となっていますが、平坦な紙やフィルムに大量に印刷することが求められるインキの分野では、乾燥性や密着性を考えると、水性化にも課題があります。

 

一方、光硬化樹脂を用いたUVインキは、紙やフィルムを素早く巻き取る印刷工程でも光照射の工夫がしやすく、乾燥性や密着性でも水性インキより親和性が高いため、UVインクジェット印刷方法も含めて注目されています。さらに光硬化樹脂は、溶剤を使わないだけでなく、水性インキのように熱による乾燥が不要なことからCO2削減の面でも優れており、より環境に優しい製品と言えます。

 

このように光硬化樹脂は、SDGsにおける3番「すべての人に健康と福祉を」や9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」、11番「住み続けられるまちづくりを」、12番「つくる責任つかう責任」、13番「気候変動に具体的な対策を」など、さまざまな開発目標に貢献できる製品なのです。

 

三洋化成では今後も、『ネオマー』をはじめとする機能性モノマーはもちろん、これらを応用した『サンラッド』のような光硬化樹脂システムを提供し、SDGsに貢献していきます。

 

[関連する SDGs]

 

 

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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