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軽くて強い炭素繊維の性能を支える

三洋化成ニュース No.524号

軽くて強い炭素繊維の性能を支える

2021.02.02

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炭素繊維は「鉄よりも強く、アルミよりも軽い」といわれる素材です。
現在では自動車や航空機をはじめ、エネルギー分野へも用途が広がり、SDGsにも大きく貢献しています。
この炭素繊維の製造に欠かせない集束剤を紹介します。

航空宇宙やエネルギー分野でも拡大する炭素繊維

FRPという言葉を耳にすることがあると思います。これは繊維と複合化することで強度を高めた繊維強化プラスチックと呼ばれる素材ですが、強化材の一つが炭素繊維です。炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させ、熱をかけて硬化することで、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)になります。

炭素繊維は、強くて軽いことが特長で、重量当たりの強さは鉄の約10倍。変形しにくさも約7倍に達します。また膨張しにくいうえに錆びることがなく、さらに薬品や熱への耐久性、X線の透過性にも優れるなど、さまざまなメリットがあります。

FRPには、ガラス繊維を使用したもの(GFRP)もありますが、炭素繊維はガラス繊維と比べても約2倍の強さと約5倍の変形しにくさを持っています。

こうした特性から、炭素繊維は強さと軽さが求められるさまざまな分野で発展してきました。日本では、1970年代に釣竿やゴルフクラブのシャフトなどスポーツの分野で活用が始まり、90 年代には産業機械や土木建築材など産業用途での本格使用がスタート。2000年代以降は、航空機や人工衛星、風力発電の風車など、航空宇宙やエネルギー分野でも金属に代わる素材として急拡大しました。

 

三洋化成独自の界面制御技術で高性能を実現

炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を燃やして炭素の繊維に変えるPAN系と、炭素に近いコールタールなどから繊維をつくるピッチ系があり、現在はPAN系が主流になっています。

炭素繊維自体は繊維という名が示す通り、1本数ミクロンの細い繊維から形成されます。紡いだり燃やして炭化したりする際にも当然、強度を出す工夫はしていますが、単体では切れやすいため、その繊維を数千〜数万本束ねた「トウ」と呼ばれる太い糸にする必要があります。その際に使用し、1本1本の炭素繊維をつなぐ役割を果たすのが炭素繊維用集束剤です。

炭素繊維用集束剤には、まず「トウ」をしっかり束ねて、糸切れによる毛羽を抑制する働きが求められます。そのうえで加工する際に必要な柔軟性も持たせなければなりません。三洋化成の『ケミチレン』はこれら相反する特長を併せ持ち、炭素繊維の取り扱い性を改善する能力に優れています。また「トウ」に加工した後、CFRPとして含浸させる樹脂とうまく混ざり合うなど、炭素繊維の強さと変形しにくさをより引き出すように設計されています。

 

 

これには三洋化成が長年培ってきた、独自の界面制御技術が活かされており、これらの性能が高く評価され、世界中で多くの炭素繊維に活用されています。

 

風力発電の風車はもちろん、空飛ぶクルマなど未来の技術への活用も

炭素繊維の活用は、世界的に見て年間5〜10%の比率で伸びており、今後も需要の拡大が続くと予測されています。既存の産業分野での拡大はもちろん、燃料電池車用の水素タンクなど、炭素繊維だからこそ実現できる領域での需要も確実に広がっています。

特に風力発電に使用される風車のブレードでは、ガラス繊維では重さやたわみなどの問題で50メートル程度までしか対応できなかったところ、炭素繊維では100 メートル級のブレードが可能となり、発電効率を大幅に向上させることが可能となりました。風力発電の発電量は世界規模で見て、今後10年間で年率約8%伸びると予想されており、日本でも洋上風力発電の計画などが持ち上がるなど拡大傾向にあります。今後も、炭素繊維が大きな役割を果たしていくことは間違いありません。

また新たなニーズとして、航空機やドローンにも広く活用されていることから、将来的には空飛ぶクルマなど、未来の技術への活用も期待されています。

 

空飛ぶクルマ(イメージ)

 

軽量化による消費エネルギーの低減はもちろん、再生可能エネルギーの利用でも需要が伸びる炭素繊維は、エネルギーの活用や産業の発展はもちろん、ひいては気候変動への対策としても大きな役割を果たしており、まさにSDGsに大きく貢献している素材といえます。

 

量産性とリサイクル性を向上し将来にわたりSDGsに貢献

多くの分野で活用が進む炭素繊維ですが、現状、課題がないわけではありません。ハイブリッド車や電気自動車などの普及により、自動車市場では強くて軽い炭素繊維の利用拡大がさらに期待されています。ただ生産量が格段に違う自動車部品に対応するためには、CFRP製造プロセスの高速化に対応できる集束剤が必要となります。また自動車市場での本格使用が始まった場合、持続可能な社会を実現するためには、現状再利用が難しいCFRPをリサイクルしやすい素材にすることも求められます。

生産性やリサイクル性の向上のため、使用される樹脂や成型プロセスも変わる可能性があり、それにマッチする炭素繊維用集束剤の開発は、難易度の高い課題ですが、三洋化成ではメーカーとして果たすべき重要な役割と位置づけ、開発に取り組んでいます。今後さらに進化を遂げると思われるCFRPを、より使いやすく、より大量に生産できる『ケミチレン』の開発に注力し、将来にわたりさらにSDGs に貢献していきます。

 

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