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[vol.11] 「ねばならない」を見つけて、手放そう

三洋化成ニュース No.536

[vol.11] 「ねばならない」を見つけて、手放そう

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2023.01.23

安藤 俊介

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私たちが信じている「べき」が、怒りの感情にとても深く関係していることは本連載で紹介しました。

「時間を守るべき」と思っている人は遅刻をする人を見たらイラッとしますし、「年配者を敬うべき」と思っている人は年配者に失礼な振る舞いを見ればムカッとするといった具合です。

「べき」は「はず」「普通」「当たり前」「常識」といった言葉でも置き換えることができます。

無駄にイライラしたくないのであれば「べき」が裏切られる回数を減らそう、そのためには「せめて」という言葉を使うといいですよと考え方や方法を紹介しました。

あれから1年以上が経ちましたが、「べき」が裏切られる回数を減らすことを意識できたでしょうか。

 

「べき」よりももっと気を付けなければいけないもの

頭ではわかっているものの、簡単に「べき」を緩めたり、なくしたりすることなんてできないと思う人も多いことでしょう。

言うまでもなく全ての「べき」が悪いわけではなく、手放す必要もありません。ただ、無駄にイライラしたり、後悔したりするような怒りにつながる「べき」は緩めたり、手放した方が楽になります。

努力したつもりなのに手放せない「べき」があるとしたら、それはもしかすると別のものに形を変えている可能性があります。そしてその別のものはあなただけでなく、周りの人にもとても厄介なものになっているかもしれません。

その厄介なものの正体は「ねばならない」です。「ねばならない」は「べき」がより強くなったものです。英語で言えば「べき」がshould、「ねばならない」がmustです。

先の例で言えば「時間を守らなければならない」「年配者を敬わなければならない」となります。

「ねばならない」のですから、絶対にそうしなければいけないのです。そうしなければいけないと思い込んでいるので、そうならなかった時には、「べき」が裏切られた時よりも強く怒りが発火します。

 

「ねばならない」も全て正しい

この世の中に間違った「べき」はありません。どんなに社会的にはクエスチョンマークが付くような「べき」だとしても、少なくとも信じている本人にとっては正しいものです。

そして当然のことながら「ねばならない」も信じている本人にとっては疑う余地もなく正しいものです。

自分が正しいと信じているものが間違っていたと受け入れるのはとても大変なことです。なぜなら、自分の信じていたことを否定することになるので、自分そのものを否定するような気持ちになるからです。

自分が信じていることを否定することと、自分自身を否定することは違うことですが、なかなかそう思えないのが人の心理です。

「ねばならない」は「べき」以上に手放すのが難しいものですが、少なくとも自分や周りの人を苦しめるものになっている場合が多いことは知っておきましょう。

誤解を恐れずに言えば、あなたが意識的、無意識のうちに思っている「ねばならない」は百害あって一利なしです。

なぜなら、あなたがいくら「ねばならない」と思っても、そうはならないことが世の中にはたくさんあるからです。たくさんあるということは、あなたの思いが裏切られ、否定されたように思うことが身近にあふれているということです。

 

「ねばならない」を見つける

「ねばならない」を手放すことは難しいのですが、まずは「ねばならない」を見つけましょう。見つけることくらいなら比較的簡単にできます。

見つけても手放せないのであれば意味がないのではないか、と疑問を持つかもしれませんが、そんなことはありません。

あなたを強く縛り、苦しめるものの正体がわからなければ対策の打ちようがありませんが、理由を知れば、今すぐには解決できなくても対策を講じることができます。

「ねばならない」を見つけるには、まずはあなたの口癖を見つけましょう。はっきりと言葉にして「ねばならない」とは言っていなくても、心の中でそう言っていることはよくあります。もし気づいたらメモをしておきましょう。

あなた自身ではなく、周りの人も「ねばならない」と口にしています。それを見つけることも、自分自身の「ねばならない」を見つけるのに大いに役立ちます。

 

安藤 俊介〈あんどう しゅんすけ〉

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。日本におけるアンガーマネジメントの第一人者。アメリカのナショナルアンガーマネジメント協会では15人しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人としてただ一人選ばれている。『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)ほか著書多数。

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