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インプリント用UV硬化樹脂

三洋化成ニュース No.511号

インプリント用UV硬化樹脂

2018.11.01

電子材料研究部
ユニットマネージャー
吉田 和徳
[お問い合わせ先]電子・樹脂・色材本部 電子材料産業部

 

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今や日常生活にスマートフォン、タブレットやカーナビ、テレビやパソコンなどの電子機器は欠かせない。それらで表示・映像化するためのディスプレイは、電子機器の軽量化、薄型化、大型化、フレキシブル化などさまざまな目的、状況に応じて多様な発展を遂げ、現在の高度情報化社会を支えてきた。
近年主流の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイは、さまざまな機能を有する光学フィルムを何層にも重ねて構成されている。画面をよりきれいに、より見やすくしたいという高性能化のニーズが高まりを見せ、光学フィルムにもより精密に光を制御する機能が求められている。さらに製造時の歩留り性や製品の信頼性などのたゆまぬ向上が求められている。本稿では、これらのニーズに応えるべく開発した当社の光学フィルム用UV硬化樹脂『ファインキュアー』シリーズについて紹介する。

液晶ディスプレイの構成

液晶ディスプレイは、偏光板で液晶表示の制御を行い、バックライトなどの光源の光をカラーフィルターに通過させたり遮ることで表示している。偏光板は、ブラインドのような役割を果たす光学フィルムである。そのほか、表示品位を向上させるために、外光を拡散し、画面を見やすくする反射防止フィルム、バックライトの光をそろえて均一にするプリズムシート、集めた光を拡散し、輝度を上げる拡散フィルムなど、さまざまな機能をもった光学フィルムを多層に重ねて作られている(図1)。
光学フィルムには、それぞれの機能を発現させるべく、微細な加工が施されている。高画質化、視認性向上など高性能化のニーズが高まるなか、光学フィルムにもより高度な光制御技術が求められている。

 

インプリントフィルム

光をより精密に制御するためには、光学フィルムに施される微細加工の高精細化が必要である。本加工の主方法としてインプリント(転写)方式がある。表面に微細な凹凸を有する金型を樹脂に押し当てた後、硬化させて取り外すことで光学フィルムを得る方式である。熱硬化方式と紫外線(UV)硬化方式があるが、UV硬化は熱硬化のように高熱をかける必要がなく、短時間で製造できるため省エネが図れ、熱に弱い部材にも使用可能であり広く用いられている。
UV硬化方式では、UV硬化樹脂をPETフィルムなどの基材フィルムに塗布し、金型を押し当ててUV照射・硬化させる。離型すると基材フィルム上に微細なパターンが転写された成型物が得られる(図2)。高度な転写性を実現するためには、液状の樹脂の金型への入り込み性、成型物の金型との離型性、基材フィルムとの密着性、寸法安定性、信頼性が必要となる。近年の高画質化ニーズの高まりに伴い、ナノレベルの微細成型(ナノインプリント)された光学フィルムが求められ、UV硬化樹脂に要求される性能もますます高まっている。

 

 

離型性の高いナノインプリント用UV硬化樹脂

当社では従来から特殊なモノマー設計などによりUV硬化樹脂システムを開発してきた。ニーズの高度化に伴い、優れた界面制御技術と高精細化に対応できる樹脂設計技術を活かし、ナノインプリントなどの超微細加工に最適なUV硬化樹脂を開発している。当社のUV硬化樹脂システム『ファインキュアー』シリーズは、当社の得意とする界面活性剤技術を活かして独自に設計した特殊離型剤を配合しており、金型に対して高い離型性を発揮する。そのため超微細なパターンでも金型に樹脂が残らないだけでなく、金型の摩耗低減にも役立っている。さらに樹脂にもストレスがかかりにくいため、クラックなどの不具合が発生しにくい。また、金型にのみ選択的に離型性を発揮するよう設計されているため、このような高い離型性にもかかわらず、基材フィルムに対しては高い密着性を有している(表1)。さらに、出来上がった成型物は形状、品質ともに長期間安定するのが特長である。
また、用途やニーズに合わせて各種性能を選択できるよう多彩なラインアップを取りそろえている。光学特性として重要な因子である光の屈折率を制御することができるうえ、柔軟性、強靭性といった機械的特性、耐光性、色・形状の持続性といった信頼性など、光学フィルムの付加価値となるさまざまな性能を引き出すことができるのも『ファインキュアー』シリーズならではの強みである(表2)。

 

 

高い耐擦傷性を有するナノインプリント用UV硬化樹脂

光学フィルムには、光学部材としての光学特性や転写性などの加工性だけでなく、製造工程でほかの材料と接触したり、最終製品において傷が付いたとしてもすぐ戻るといった耐擦傷性(傷回復性)も求められる。
『ファインキュアー』シリーズでは、弾性回復による高い傷回復性を発現するグレードも開発している。特殊モノマーを樹脂中でナノ分散させることにより、硬化物中に高架橋密度部位と低架橋密度部位が形成されるように設計した。そのメカニズムとしては、高架橋密度部位を起点として低架橋密度部位が分子運動することで、ゴム弾性を発現していると推定している(図4)。『ファインキュアー』の動的粘弾性データを図5に示す。従来品と比較し、貯蔵弾性率(E’)を維持したうえで、損失弾性率(E”)が低下していることがわかる。すなわち樹脂自体の柔軟性は高いが、復元力も高く、結果として傷が入っても回復する機能を有する。図7に示すように、本樹脂を使用して成型したフィルムは耐擦傷性(傷回復性)に優れているため、製造時の歩留り向上、製品信頼性向上に寄与する光学フィルムとなる(表3)。

 

 

終わりに

近年の省エネルギー、ゼロエミッションに対する関心の高まりから、光学フィルム製造時のさらなる省エネ化を図るため、UV-LED光源の活用も進んでいる。当社もUV-LED光源対応の『ファインキュアー』の開発を進めている。
また有機ELディスプレイ、車載ディスプレイなどの新たな電子機器の普及に伴い、材料に求められる要求性能も年々高度化してきている。このような最新の電子機器のニーズに応えるべく、これからも開発に注力していく。

 

当社品をお取り扱いいただく際は、当社営業所までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

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