MENU

ポリエチレン系フィルムシート用帯電防止剤

三洋化成ニュース No.518号

ポリエチレン系フィルムシート用帯電防止剤

2020.01.10

事業研究第二本部 機能性樹脂研究部
ユニットチーフ
中村 泰司
[お問い合わせ先]
電子・樹脂・色材本部 樹脂産業部

 

PDFファイル

プラスチックは、成形性、軽量性、電気絶縁性などの優れた特性を有しており、家電・OA機器のハウジング、電子部品の搬送用トレーや包装材料、自動車内装材など幅広い産業分野で使用されている。

しかしながら、その電気絶縁性のために、表面が帯電しやすく、静電気に由来する問題もしばしば生じる。例えば、プラスチック製品へのホコリや汚れの付着による不良品の発生、プラスチック同士の貼り付き、静電気放電による電子機器の損傷や誤作動、スパークによる火災や粉塵爆発といった災害などが挙げられる。

このような静電気に由来する問題を回避するため、使用目的に応じてプラスチックの表面の帯電しやすさ(表面固有抵抗値)が制御されている(表1)。その制御方法の一つが帯電防止剤の使用である。当社はこれまで、帯電防止性を半永久的に保持できる高分子型帯電防止剤『ペレスタット』シリーズおよび『ペレクトロン』シリーズを上市し、製品ラインアップを拡充してきた。本稿では、高分子型帯電防止剤の開発経緯とともに、近年採用が進んでいる食品包装用のポリエチレン(PE)系樹脂フィルムに適用可能な帯電防止剤『ペレスタットLM230』(開発品)について紹介する。

 

帯電防止剤

プラスチックの帯電防止には、静電気を逃がすために帯電防止剤を用いてプラスチックに導電性を付与する方法が一般的である。帯電防止剤には、界面活性剤やカーボンブラック、高分子型帯電防止剤などがある。なかでも高分子型帯電防止剤は、湿度依存性がなく、ブリードアウトしないなどのメリットから幅広い用途に利用されている。電荷の通り道となる導電性ユニットを分子内に有する高分子を、プラスチックに添加し、相溶化させることでプラスチック内部に導電回路を形成して帯電防止性を付与する。その効果は半永久的に持続することから、永久帯電防止剤とも呼ばれている。

三洋化成の高分子型帯電防止剤

当社は、1994年に高分子型帯電防止剤『ペレスタット』シリーズを上市した。『ペレスタット』は、PEO鎖を有する特殊ブロックポリマーで、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの各種プラスチックへ10質量%程度添加することで、それらのプラスチック樹脂に永久帯電防止性を付与することができる。

『ペレスタット』の帯電防止性発現機構を図1に示す。まず、『ペレスタット』自体は表面固有抵抗値が107~109(Ω/□)であり、適度な導電性を有している。また、『ペレスタット』を樹脂と溶融混錬して成形すると、適度な導電性を有する材料がプラスチック中で筋状に分散し、導電回路を形成することで、プラスチックに蓄積した電荷を逃がし、帯電を防止する。プラスチック中で『ペレスタット』を筋状に分散させるためには、樹脂と溶融混練時の分散状態を制御し、成形時のせん断応力を活用することが必要である。プラスチック中で効率的に筋状導電回路を形成させるために、当社の分散制御技術を活かし、樹脂との相溶性、溶融粘性を最適化するように設計している。

『ペレスタット』の主な特長としては、(1)成形直後から優れた帯電防止効果を発揮し、その効果が半永久的に持続する、(2)効果が湿度環境に依存しないため、低湿度化でも高い帯電防止性を発揮する、(3)ブリードアウトがなく、接触物の汚染が少ない、(4)熱安定性に優れ、成形品の耐熱性を損なわない、(5)各種樹脂への分散性に優れ、適用樹脂の幅が広い、(6)顔料で任意のカラーリングができる、などが挙げられる。

 

 

『ペレスタット』を使用することでプラスチック成形品の表面固有抵抗値を1010 ~1012(Ω/□)に制御可能である。また、表面固有抵抗値をより低くしたい場合に適した、低抵抗タイプの高分子型帯電防止剤『ペレクトロン』シリーズも取りそろえている。『ペレクトロン』シリーズは、当社独自の技術を組み合わせることで、PEO鎖のイオン伝導性を最大限に発揮できるように設計され、『ペレクトロン』自体の表面固有抵抗値は106(Ω/□)まで低抵抗化している。この特長を活かして、これまで高分子型帯電防止剤が使用されていなかった分野にも活躍の場が広がっている。例えば、電子部品・回路の保護には、樹脂の表面固有抵抗値を107~109(Ω/□)程度で制御する必要がある。表面固有抵抗値が高すぎると静電気によって、低すぎると直接放電によって電子部品・回路が破壊される恐れがあるためである。『ペレクトロン』を用いることで表面固有抵抗値を107~109(Ω/□)に制御することができる。図2 に『ペレクトロンAS』をABS樹脂に使用した場合の添加量と帯電防止性(表面固有抵抗値)の関係を示す。

 

 

フィルム・シート成形用高分子型帯電防止剤『ペレスタットLM230』

ポリオレフィン樹脂は、その優れた加工性に加えて防湿性、ガスバリア性、耐薬品性、ヒートシール性といった特徴により、フィルムやシート状に加工して、包装材や保護材として用いられることも多い。このような用途においても帯電防止のニーズは高い。

表面保護フィルムや電子部品などの搬送・包装用途では、電子部品が静電気障害による不具合を生じる可能性がある。静電気障害から保護するためにも高い帯電防止性が求められる。

粉体の保管・運搬・投入(仕込み)などに用いられるフレキシブルコンテナバッグには、その内袋にPE樹脂フィルムが用いられているが、内容物と内袋との摩擦によって静電気が発生すると静電気放電による爆発・火災が発生する恐れがある。そのため、フレキシブルコンテナ内袋では静電気による粉塵爆発を防止するために1010~1011(Ω/□)に制御することが要求される。

内容物が化粧品原料や医薬中間体のような高価な粉体である包装材の場合、静電気により粉体が付着して残ってしまうとコストアップにつながる。ロス低減のためにも帯電防止性が要求される。このようにさまざまなフィルム・シート製品において、帯電防止性は重要である。

近年、特に欧米市場では食品粉体用フレキシブルコンテナ内袋や医薬品中間体用包装材向けの帯電防止ニーズが増加しており、これらの用途に帯電防止剤を使用する場合は、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority:EFSA)や、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から食品包装材としての認証を取得する必要がある。当社の帯電防止剤では『ペレスタット230』が認証を取得している。

しかし、主にフレキシブルコンテナ内袋や医薬品中間体用包装材などに用いられているPE樹脂フィルムの成形温度は比較的低く、融点がやや高い『ペレスタット230』(融点:約165℃)を使用した場合、十分な帯電防止効果やフィルム特性を得ることが困難であった。この理由は、低い成形温度では『ペレスタット230』が十分に溶融せず、フィルムやシート成形品の表層にうまく導電回路を形成することが困難なためである。そこで、当社は低融点の『ペレスタットLM230』を開発した。本開発品の融点は約115℃であり、従来品である『ペレスタット230』よりも融点を約50℃低下させるとともに、PE系樹脂に対する相溶性を向上させることに成功した。フィルム・シート等に使用される低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂に、『ペレスタットLM230』を使用した場合の添加量と帯電防止性(表面固有抵抗値)の関係を図3に示す。また、本開発品はLDPE樹脂への相溶性に優れるため、フィルムの外観や樹脂物性に悪影響を与えることもない。さらに、フィルムに必要とされる特性であるヒートシール性についても、融点を下げることで、従来品『ペレスタット230』よりも大幅に改善することが可能となった(図4)。

 

 

今後の展開

『ペレスタット』『ペレクトロン』シリーズの性状例と対象樹脂を表2に示す。『ペレスタット』『ペレクトロン』シリーズは多種多様な樹脂やさまざまな形状に対してニーズに合わせた帯電防止性を付与できるため、図5に示すように、幅広い用途で活躍している。今後も多様化する帯電防止ニーズに対応すべく、製品改良や各種認証取得を行い、適用用途の拡大を狙っていきたい。

参考文献
1)「帯電防止材料の設計と使用法」、サイエンス&テクノロジー(2008)
2)「高分子添加剤の技術と市場」第1 章4.4、シーエムシー出版(2018)
3)千田英一、徳永浩信、色材協会誌、Vol.90、No.11(2017)
4)藤本武彦監修『高分子薬剤入門』、三洋化成工業株式会社(1992)
当社品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

最新記事Latest Article

PAGE TOP