MENU

小さな取り組みを重ねて 日本のゴミを、少なくしたい

ゴミ清掃員・お笑い芸人 滝沢 秀一

小さな取り組みを重ねて 日本のゴミを、少なくしたい

2021.02.05

ゴミ清掃員・お笑い芸人
滝沢 秀一 〈たきざわ しゅういち〉
Shuichi Takizawa
1976年、東京都生まれ。太田プロダクション所属。東京成徳大学在学中の1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年からゴミ収集会社で働いている。著書に、奥様が作画を担当したマンガ『ゴミ清掃員の日常』『ゴミ清掃員の日常 ミライ編』、エッセイ『このゴミは収集できません』『やっぱり、このゴミは収集できません』、絵本『ゴミはボクらのたからもの』などがある。
写真=本間伸彦

 

日頃何気なく集積場に出しているゴミ。回収されたゴミはどうなるのか、なぜゴミを分別しなければならないのか、知っていますか? お笑い芸人「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員として働く滝沢秀一さんが、日々扱うゴミからの発見を鋭い観察力でまとめたマンガ『ゴミ清掃員の日常』は、大きな話題になりました。滝沢さんに、ゴミ清掃の仕事を通じた社会・環境の見方や仕事観、今後の活動の展望について伺いました。

 

出したゴミが回収されることのありがたみ

-- なぜお笑い芸人のお仕事のかたわら、ゴミ清掃員として仕事をすることになったのでしょうか。 

きっかけは妻が妊娠してお金が必要になったことでした。当時からお笑いの仕事が少なかったのでアルバイトを探したんですが、なかなか見つからなくて。そんな時に友達に紹介されたのがゴミ清掃員だったんです。ゴミ収集は自治体が行うんですが、一部は民間の会社に委託されているので、僕もいろいろな区に行って、さまざまな種類のゴミを回収しています。

-- ゴミの出し方のルールやマナーを守っていないようなゴミも、よくあるのですか。

はい。一番困るのは、生ゴミの水分がゴミ袋にたまっているものです。なかには、みそ汁をそのままゴミ袋に入れてしまったようなものもありますよ。ゴミ清掃車でゴミ袋を圧縮するのですが、水分が多いと、水が噴き出してきてしまいます。うっかりその水をかぶると一日中臭いが取れなくて、お昼ご飯を食べる時も食欲がわきません。水分をきちんと絞ってから出してもらうと、清掃車の臭いも少なくなるし、焼却場で燃やすときの効率も良くなって、無駄な税金がかからなくてすむんです。

-- 各家庭で生ゴミの水分を切るのは大事ですね。

ほかには、ゴミ袋いっぱいに詰めてあって、がんばって何とか口を結んだけれど結び目がテントウムシくらい小さなゴミ。持ち上げた瞬間にほどけるんです(笑)。また、ゴミ袋の中に割れた食器や焼き鳥などの串が入っていることも多いです。清掃員はゴミ袋の結び目を持つように気を付けているんですが、まだまだこういったものでけがをすることもあります。

-- 大変なお仕事です。私たちがゴミを出すときに気を付けるべきことは何でしょうか。

助かるのは、水分を切って空気を抜いて、結び目をしっかり縛ってあるゴミですね。こういうゴミを僕は「美人ゴミ」と呼んでいます。ゴミを収集する清掃員のことを想像してもらえれば、ゴミの出し方は変わると思います。「このゴミを清掃員が持ったら、どうなるかな」「収集された後、どうなるかな」と、ゴミが自分の手を離れた後のことに思いやりを持てるのが大人だと思いますね。逆に、いつも「美人ゴミ」を出してくれている人でも「こんな手間をかけて意味があるのかな」と思っているかもしれません。でも清掃員から見ると、僕らのことを考えてくれているのがよくわかるんです。

-- ゴミ清掃員は、その地域で生活する全ての人がお世話になっている職業だと思います。

そうですね。集積所の近くに保育園があると、子どもたちが歓声を上げて集まってきて、一生懸命見ています。でも小学生くらいだと、「臭ーい」と言って鼻をつまんでいますね。なんとなく、お金持ちが多く住んでいる地域のほうが、鼻をつまんでいる子どもが多い気がします。この間、親まで一緒になって「臭いね」なんて言っていたので驚きました。僕は小さい頃にゴミ収集車を「臭い」と言ったら親に叱られましたよ。

-- 生活している以上、必ずゴミは出るものです。私たちが出したゴミを収集してくれる方々に対しての感謝の気持ちを、子どもたちにも教えたいですね。

ゴミ清掃員自身にも、「人目に触れてはいけない仕事」という意識がまだまだあるかもしれません。ただ、新型コロナの影響で緊急事態宣言が出て、僕ら清掃員を取り巻く空気が少し変わりました。みんなが外出自粛をしている時にも、仕事を休むわけにいかないゴミ清掃員はエッセンシャルワーカーの一つとして注目されたんです。道端で声をかけられることが増え、お手紙をもらった同僚もいます。非日常のなかで、出したゴミが回収されて普通に生活できることの幸せを、改めて感じた人が多かったのかもしれませんね。

 

学生向けにゴミ問題に関して講演をする滝沢さん

 

-- これを機に、お世話になっている人たちに気軽に挨拶をしたり、「ありがとう」と声かけできたりする社会になるといいですね。

 

 

混ぜればゴミ、分ければ資源

-- 燃えるゴミと燃えないゴミは誰にでもわかりやすいですが、その中から資源ゴミを分別するとなると少し難しくなります。

その通りです。実はゴミは、燃えるゴミと燃えないゴミの2種類しかありません。その中からまた使えるものを分別すれば、ゴミが減らせるんです。もう一度使えるものはゴミではないので「資源ゴミ」ではなく、「資源」「資源物」と言うと教わりました。

-- ビンや缶、ペットボトルなどを不燃ゴミに混ぜてしまうと、リサイクルできず捨てられてしまうんですね。紙類はどう分別したらいいですか。

段ボール箱に新聞や雑誌、チラシなどをぜんぶまとめて入れてあると、僕らが手作業で分けなければいけません。折り込みチシを含む新聞と、段ボールはそれぞれまとめて、雑誌やパンフレット、コピー用紙、ティッシュやお菓子の箱などは全部 雑紙 ざつがみとしてまとめてください。

-- あと、迷うのがプラスチックなんです。

わかりにくいですよね。ペットボトルのラベルや食品の容器、シャンプーのボトルなどは、容器包装プラスチックという名前で回収されている地域が多いです。汚れが付いていれば軽くすすいで出してくださいね。シャンプーのボトルは、ペットボトルに混ざっていることが本当に多いです。液体が入っているので似たようなものだと思ってしまうのかもしれませんが、ペットボトルとしてリサイクルできるのは基本的に飲料が入っていたものと覚えるといいと思います。調味料も最近ペットボトルに入っている製品が多いですが、油などはボトルに染み込んでしまっていてリサイクルできないので、可燃ゴミに出してください。また、プラスチックのおもちゃやストローなどは「包装」ではないので、容器包装プラスチックに混ぜてはいけないんです。これは清掃員でも混乱するところです。

-- えっ。知りませんでした。

もっとややこしいのがラップ。家庭で使うラップは可燃ゴミ、スーパーなどで包装に使うラップは容器包装プラスチックなんです。混ざっていたら手作業で分けているんですよ。地域によっては、ラップは石油が原料なので、燃料代わりに燃やすというところもあります。ゴミって深いでしょう。

-- 複雑なんですね。

清掃員になって8年になりますが、知らないことがまだまだ多いです。ゴミの出し方は地域によって違うので、お住まいの地域のゴミカレンダーをよく読んでみると、意外な発見があって面白いですよ。

-- 意外と知らずにいたことが多いかもしれません。最近はレジ袋が有料化されたので、今までのようにゴミをまとめるのにレジ袋を気軽に使えなくなりました。

そうですね。集積所でも、ペットボトルが一本ずつ立てて置いてあって、風で飛ばされて散らかっていることがあります。きっとゴミ袋がもったいないから持ち帰ってしまったんですね(笑)。世界的に見ると、レジ袋は50カ国以上で禁止や課税されていて、日本の取り組みはやっと世界標準に追いついたところです。海外でパンを買うと、紙一枚渡されて手に持って帰るんですよ。それに比べ、日本の贈答品のお菓子などは、紙の手提げ袋や包装紙、紙箱、ポリ袋に何重にも包まれて、さらにプラスチックの仕切り板が入っていたりします。これはやはり過剰包装じゃないかなと思いますね。

 

日本のゴミ最終処分場 寿命はあと20年

-- 可燃ゴミは燃やした後、どうなるのでしょうか。

可燃ゴミを燃やすと、20分の1程度の灰が残ります。一部はスラグにしてコンクリートなどに混ぜて再利用されますが、多くは不燃ゴミと一緒に最終処分場に埋め立てます。海や山に埋め立てることが多いですが、最終処分場がない県は、近くの県にお金を払って頼んでいます。日本で全員が出しているゴミの量を最終処分場の処理能力で割ったら、20年後にはもう日本全体の最終処分場がいっぱいになり、ゴミが捨てられなくなるといわれています。

-- そんなに切迫しているんですね。その20年に対して何をすべきだとお考えですか。

まずは事実を多くの人に知ってもらうことです。最終処分場の灰に降った雨はそのまま下水に流せないので、東京都ではその浄化に年間25億円使っています。こうした事実をみんなが知ったうえで、何ができるかを考える。「今の生活スタイルのままでいいのかな」と疑問を持ってもらう。ゴミを減らすための方法はいろいろありますが、みんなで考えて、小さい取り組みを積み重ねることが大事だと思います。

 

ゴミ清掃員としての経験をもとにした講演に、 多くの人が耳を傾けている

 

-- まだ食べられる食品をゴミとして捨ててしまうことも多いと聞きました。

日本で一年間に捨てられる食品のゴミは約610万トン、世界の食料援助が390万トンといわれています。集積所にも、お米やジャガイモ、お歳暮でもらったようなお菓子や果物、ほとんど食べ残したカップ焼きそばなどが捨ててあります。僕から見たらまだまだ食べられる物ですが、清掃員としては回収して捨てないといけないので心苦しいですね。ゴミって何かと考えると、それは人の心が決めるものだと思うんです。

-- その決め方を変えたいと考えているんですね。

同僚にギニアから来た人がいて、ゴミ袋の中に靴が入っているのを見て「これ捨てちゃうんだね、僕はギニアでずっと穴が開いた靴を履いていたよ」「なんで捨てるものを買うんだろうね」と言っていました。「僕らの生活は世界からそう見られているんだ」と、ドキッとしました。

-- 日本では、物を買うかどうか迷った時に安ければとりあえず買って、合わなければ捨てればいいと考える人も多いかもしれません。

ことわざにも「安物買いの銭失い」と言います。ちょっと高いなと思う物を買って、愛着を持って使うほうがいいかもしれませんね。僕は最近、洋服をレンタルしているんです。自分に合う服を一定期間借りた後返却するので、着なくなった服や合わない服を捨てることがなくなりました。

-- クリーニング代もいらないし、捨てることも考えなくていい。

買ったものや消費したものの最後の姿がゴミですから、僕たちの生活もビジネスもゴミも、全てがつながっています。最近は若者を中心に、大量生産・大量消費の意識が変わり始めていると感じます。僕の若い頃は、成功して運転手付きのベンツに乗るのが夢でしたが、今の若者は車を欲しがらず、カーシェアで十分だそうです。ネット上では、消費者同士が不要になった物を売り買いすることも当たり前になっています。これからは、物をすぐ捨てずに大切に使う考え方のビジネスが、さらに発展すると思います。

 

 

仕事を楽しめば新たな道が開ける

-- 今、ゴミ清掃員とお笑い芸人のお仕事は、どちらに軸足を置かれているんですか。

本業はゴミ清掃員だと思っていますが、都合よく行ったり来たりしていますね(笑)。お笑いライブで滑ったら、「明日回収がんばろう」という気持ちになりますし、ゴミ回収で嫌なことがあれば「お笑いのネタにならないかな」って思います。お笑いの仕事では「面白いことを言わなきゃ」という気負いがなくなり、性格が明るくなったと言われることもあります。

-- なるほど。生活のためにゴミ清掃員を始められた当初は、複雑な気持ちもあったのでしょうか。

はい。お笑いで飯を食いたいと思っていた頃は仕事がつらかったですが、「どうせやるんだったら、本気でゴミ清掃員をやろう」と思った頃から仕事が楽しくなって、ゴミ収集中の発見を人に話すようになりました。仕事って、やらされている感覚だとしんどいので、いかに自分の状況を楽しむか考えるようにしています。

 

マシンガンズの漫才(「太田プロライブ月笑2019」にて)

 

-- 世の中、自分のやりたい仕事に就けている人ばかりではないですが、「どうせやるなら本気で」って大事ですね。

僕はもともとビートたけしさんやダウンタウンさんに憧れて、お笑いで天下を取ろうと思っていたんですが、そこまで行けるのは、ものすごい努力をした一握りの天才だけ。僕ももちろんお笑い芸人として、もっとたくさんの人を笑わせたいと思っていますが、「日本からゴミを少なくしたい」という新しい目標もできました。今は「ゴミ芸人」としてテレビに出ることも増え、道は一つじゃないんだなと思っています。

-- 目指した夢とは違っても、視野を広げれば近くに楽しそうな道があるかもしれないのですね。

僕は本当にたまたまこの仕事に就いたことで、世の中の見方が変わりました。ゴミ清掃員になって良かったです。本人が楽しんでいれば、どんな生き方も「負け組」なんて言えないと思います。

-- 本当ですね! 日本からゴミを少なくするために、今後の活動の展望をお聞かせください。

ゴミを少なくするために大切な「3R」という言葉があります。ゴミ自体を減らすリデュース(Reduce)、すぐに捨てずに繰り返し使うリユース(Reuse)、形を変えて資源にするリサイクル(Recycle)の三つですが、これを僕は「4R」にしたいと思っています。四つ目はリスペクト(Respect)。例えば食べ物なら、生産者や工場でパック詰めした人、お店まで運んだ人、買ってきて料理してくれた人のことを考えたら、食べずに捨てるのはもったいないなという気持ちが起こると思うんです。リスペクトの気持ち一つが、ゴミ問題の解決の糸口になるかもしれません。これを日本全国の人に伝えたいですね。

-- 明日から、教えていただいたことに気を付けてゴミを出したいと思います。本日は、ありがとうございました。

 

と   き:2020年10月1日

と こ ろ:東京・日本橋の当社東京支社にて

 

 

 

最新記事Latest Article

PAGE TOP