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水溶性工作油の潤滑性や低泡性をさらに高め、より高度な金属加工を可能に

三洋化成ニュース No.539

水溶性工作油の潤滑性や低泡性をさらに高め、より高度な金属加工を可能に

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2023.07.12

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金属製品の加工には、工作油剤は欠かせない存在です。なかでも水溶性工作油は、作業性や環境面に優れることから、性能面でのさらなる向上が求められていました。
今回は独自の技術で、高度な金属加工を可能にした水溶性工作油用合成基剤を紹介します。

 

金属加工時の摩擦を低減する工作油剤

自動車や機械、建築資材などさまざまな金属製品は、切削、プレス、圧延など何らかの金属加工が行われています。これらの加工により発生する摩擦は発熱や損傷を引き起こし、そのままでは製品不良の原因になってしまいます。そのため金属の加工時には、ほとんどのケースで摩擦を低減するための工作油剤が使われています。発熱や摩擦面の損傷を抑えることで、製品不良率の低減はもちろん工具寿命の延命も可能になります。

この工作油剤には、希釈せずに使用する「不水溶性」と水で希釈して使用する「水溶性」のものがあります。

一般的に不水溶性工作油は鉱物油が主成分で、摩擦を低減させる極圧剤などの各種添加剤を溶解させられることから潤滑性に優れています。短所としては、引火の可能性や、作業時に発生するミストによる作業者への悪影響および工作機械や床が汚れてしまうといったことが挙げられます。

一方、水溶性工作油は水を利用するため冷却性に優れるのが特長です。洗浄もしやすく塗料などの後工程にも有利なことから、作業環境の改善や環境負荷低減といった観点で、需要が拡大してきました。ただ、こちらは、不水溶性工作油に比べて潤滑性が劣るほか、金属の錆や希釈する水の腐敗対策が必要といった短所があるため、現在はそれぞれの潤滑油が、その特性を生かせる分野で使い分けられています。

 

金属加工の進化で、性能の向上が求められる水溶性工作油

この水溶性工作油の主成分となるのが、水溶性工作油用合成基剤です。この基剤が潤滑性や水溶性といった基本性能を大きく左右します。

水溶性工作油には大きく分けて、エマルションタイプ、ソリュブルタイプ、ソリューションタイプの3種類があります。

エマルションタイプは、鉱物油や各種添加剤などの油性成分を界面活性剤で水中に分散させることで、潤滑性を向上させています。ただし、鉱物油が入っているため、水と混ぜると乳白色になり加工点が見えづらいことや、界面活性剤を用いているため加工時に泡が立ちやすいというデメリットもあります。

水で希釈しても透明なソリューションタイプは、加工点が見え、洗浄時に残渣が残りにくいことが特長で、鉱物油を使わないため、環境面や作業者の健康面でも配慮されています。しかし、一般的に不水溶性工作油に用いられる各種添加剤が溶けないため、潤滑性は劣ってしまいます。

ちなみにソリュブルタイプは両者の中間の性能を持っています。

一長一短はあるものの、冷却性に優れる水溶性工作油は高速加工に適しており、金属加工の進化に伴い、精密加工や加工が難しい材料にも対応できる製品が求められていました。

 

高い潤滑性と低泡性を両立した『ユーティリオール GA-15P』

三洋化成は1960年代から水溶性工作油用合成基剤の開発に乗り出し、この分野で技術を培ってきました。その技術を用いて2021 年に上市された製品が『ユーティリオール GA-15P』です。

『ユーティリオール GA-15P』は、ソリューションタイプでありながら、不水溶性工作油やエマルションタイプでも加工の難しかった、幅広い金属種や加工方法に対応できるポリアルキレングリコール(PAG)系の工作油用合成基剤です。これまで、水溶性工作油では加工が難しかった、展延性が高いアルミなどの軽金属の加工にも使用されています。

主成分となるPAGは、親油性の酸化プロピレンや、親水性の酸化エチレンなどを原料にして作られるAOA製品群の1種です。三洋化成はAOA技術を1960年以来積み上げ、さまざまな製品を生み出してきました。

今回もこの独自のAOA技術を用い、水溶性工作油の課題であり、従来はトレードオフの関係にあった高い潤滑性と低泡性の両立に成功しました。そのほかにも、曇点が高く、水で希釈した際の透明性が高いので、比較的高温域での加工も可能になったこと、また可燃性が低く、消防法の危険物に該当しないため保管・取り扱いも容易になったことなど、多くのメリットを持っています。

またPAGは潤滑性に優れるほか、界面活性能として乳化や可溶化、浸透などの機能を付与することもできるので、金属加工油の添加剤として使うことも可能です。その特長を生かし、金属加工以外でも幅広く潤滑油としての用途で使用されています。

 

多くの分野に広がる可能性を秘めた製品

このように『ユーティリオール GA-15P』は、これまで難しかったアルミなどの軽金属加工に使用できるほか、環境負荷の低減、作業環境の向上にも寄与する、完成度の高い製品です。SDGsでは目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標12「つくる責任 つかう責任」などに貢献しています。

さらにPAGは、さまざまに機能を持たせることができるため、金属加工油以外にも油圧機の作動液など、他分野への応用も期待されています。環境・安全の観点で、油系に変わるものとして、多くの分野に広がる可能性のある『ユーティリオール GA-15P』。三洋化成では、金属加工の分野はもちろん、その活用分野を広げることで、さらに社会に貢献していきます。

 

 

 

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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