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フケ・かゆみを低減させる両性界面活性剤

三洋化成ニュース No.534

フケ・かゆみを低減させる両性界面活性剤

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2022.09.21

Beauty&Personal Care統括部 企画開発グループ

主任 長谷川 明子

[お問い合わせ先]
Beauty&Personal Care統括部 CXグループ

 

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近年、パーソナルケアのニーズが高まっており、ヘアケア商品においては、肌や頭皮への刺激が少ないシャンプーの需要が高まっている。一方で、このようなシャンプーではフケ・かゆみに関する課題も多くみられることがわかってきている。当社調べによると、日本国内のデータでも近年フケ・かゆみに関する課題への対策が盛り込まれているシャンプー製品が増加傾向にある(図1)。本稿では、これまで培ってきた界面制御技術の知見を活かして開発した、フケ・かゆみの低減に効果的なシャンプー成分について紹介する。

 

シャンプーの成分

シャンプーは表1に示すような成分から構成されている。シャンプーの主成分は洗浄基剤で、主にアニオン界面活性剤である。洗浄力や起泡力が高く比較的安価なラウレス硫酸ナトリウムなどがよく用いられている。一方、近年では洗浄力が穏やかで、頭皮への負担を少なく洗い上げることができるアミノ酸系界面活性剤の使用も増えてきている。

 

頭皮トラブルと一般的な対策

頭皮のトラブルには、フケ・かゆみなどがあり、乾燥や皮脂・界面活性剤等の汚れ残り、過度な洗浄、ストレスなどのダメージによるターンオーバーの乱れ、皮膚炎などが原因として起こる。シャンプーにおけるかゆみを防止する既存の対策としては、シャンプーにミコナゾール硝酸塩といった殺菌・抗炎症成分、ジフェンヒドラミン塩酸塩といった抗ヒスタミン成分、メントールといった清涼成分を配合するなどして、かゆみの症状を軽減するという、対症療法的な方法が一般的である。しかし、これらの対策では、かゆみの原因を取り除くことはできないため、一時的な効果に限定されてしまう。その他にも肌のバランスを整えている他の常在菌も減少してしまうこと、有効成分配合により医薬部外品扱いになることなどのデメリットがある。

 

両性界面活性剤『ピウセリア®AMC』

当社はかゆみの原因の一つが頭皮に残ったシャンプー成分の界面活性剤であるという観点から、シャンプーの洗い流しやすさに着目した。これまで培ってきた界面制御技術の知見を活かし、フケ・かゆみ防止などのトラブル対策として、両性界面活性剤『ピウセリア®AMC』を開発した。界面活性剤の肌残り、つまり肌への残存量に着目して、フケ・かゆみ防止を訴求することは、世界初となる(Mintel GNPDを用いた当社調べによる)。また、既存の対策とは全く異なる方法となるため、前述したデメリットを回避することが可能で、既存の対策と併用することも可能となる。

 

界面活性剤の肌残り低減効果

界面活性剤は臨界ミセル濃度(critical micelle concentration、略称CMC)以上では会合体であるミセルを形成し、乳化、可溶化といった界面活性能を発現するため、肌に残りづらい。一方CMC未満では単分子の界面活性剤で存在してしまうため、肌に残りやすくなる。シャンプー時の界面活性剤濃度は15%程度で、洗浄、すすぎと進むに従ってシャンプー原液から次第に希釈されていくため、CMCが高い界面活性剤の場合にはすすぎ時にミセルが形成されず、肌に残りやすくなる。従って、CMCを低くコントロールできれば、界面活性剤の肌残りを防ぐことができるのではないかという仮定のもとに検証を重ねた。その結果、CMCを低くするための方策として界面活性剤の立体障害を小さくする構造を見いだし、両性界面活性剤『ピウセリア®AMC』を開発した。その詳細なメカニズムを近年ニーズが高まっているアミノ酸系アニオン界面活性剤を例にとって説明する。図2に示した通り、アミノ酸系アニオン界面活性剤のココイルグルタミン酸2Naは親水基がかさ高い構造をとっている。汎用の両性界面活性剤であるコカミドプロピルベタインもまた親水基がかさ高い構造をとっており、組み合わせた時のミセルの立体障害が大きくなる。それに対して、『ピウセリア®AMC』の構造はスリムであることから、アミノ酸系アニオン界面活性剤と組み合わせた時に立体障害が小さくなりミセルを形成しやすくなる。つまり、『ピウセリア®AMC』は親水基がかさ高いアミノ酸系のアニオン界面活性剤とミセルを形成した時の立体障害を軽減するために、CMCを低くすることができる。その結果、シャンプーのすすぎ時には単分子が少なくなり、図3に示した通り、かゆみの原因となる界面活性剤の肌残りが少なくなるため、フケ・かゆみを低減できる。本稿ではアミノ酸系アニオン界面活性剤を例にとって説明したが、他のアニオン界面活性剤においても同様に肌残り低減効果があることを確認している。

また毛髪、頭皮以外への洗浄用途のボディーソープや洗顔料への展開も可能である。

 

 

細かい泡による高い洗浄性と低刺激性との両立

一般的に、界面活性剤自体の洗浄力を向上させると必要な油分まで取りすぎてしまい、刺激性も高くなるなど、洗浄性と刺激性はトレードオフの関係になることが知られている。当社の『ピウセリア®AMC』を、一般的に低刺激性で、洗浄力が低いとされているアミノ酸系アニオン性界面活性剤と併用し、洗浄性検証を行い、比較したところ『ピウセリア®AMC』の方が洗浄力が高いことがわかった。一方で、刺激性については、三次元培養表皮モデルを用いた皮膚刺激性試験において、コカミドプロピルベタインを用いた場合には刺激性ありという結果であったのに対して、『ピウセリア®AMC』では刺激性なしという結果が得られた。つまり、『ピウセリア®AMC』は低刺激性を維持したまま、不要な皮脂汚れを洗浄できるという機能を両立する。これは、『ピウセリア®AMC』がつくり出すきめ細かい泡が、効率的に汚れを除去することにつながったのではないかと考えている。

 

メーカー技術者のニーズに対応

アミノ酸系シャンプーはこれまで、必要な粘度を担保するのが難しいという課題があった。しかし、図4に示した通り、当社の『ピウセリア®AMC』を配合することで、汎用の両性界面活性剤コカミドプロピルベタインよりも粘度を高くすることができるため、増粘剤の添加が不要になる、もしくは増粘剤量を低減することが可能で、シャンプー処方を組みやすくなる。このことから、ユーザーのみならず、メーカー技術者にとってもメリットのある製品となっている。

 

モニター試験

20~61歳までの日本人男女13名で日頃、頭皮のフケ・かゆみが気になっている人を対象に『ピウセリア®AMC』を配合したシャンプーを2週間連用してもらい使用前後の状態についてアンケート形式で聞き取りをした。図5に示した通り「かゆみは改善しましたか?」との問いには、92%の方が改善したと回答した。また、「フケは抑えられましたか?」との問いには、84%の方が抑えられたと回答した。自由記載にはフケ・かゆみ低減以外にも、「肌に優しい感じがした」、「数日間のお試しでフケやかゆみが抑えられたので、機能性が高い商品であると思いました」、「使用を始めて数日でかゆみが軽減されたと思う。泡立ちもよく、髪がゴワゴワしなくていいと思う」など好意的な意見があった。

 

今後の展開

当社の『ピウセリア®AMC』はこれまでにないメカニズム、すなわちCMCのコントロールにより、界面活性剤の肌残りを防ぐことによってフケ・かゆみを低減するという全く新しい発想で消費者のニーズを捉えた製品である。最近では一般ユーザーの価値観が多様化し、ニーズを把握することが難しくなっている。そのようななかで、消費者のニーズを的確に捉えて開発を進めることで、付加価値の高い製品を上市することができた。今後も消費者のニーズに応える化粧品素材の製品開発を進めていく。

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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