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ディーゼルエンジンを エンストから守る -燃料油の低温時の流動性を上げる

三洋化成ニュース No.511号

ディーゼルエンジンを エンストから守る -燃料油の低温時の流動性を上げる

2018.11.01

トラック、バス、船舶などのディーゼルエンジンやボイラーの燃料として使われる軽油やA重油。冬場に気温が低下すると流動性が悪くなり、エンストなどを起こしやすくなります。今回はこうした事態を防ぐためにこれらの燃料油に混合する低温流動性向上剤の機能を取り上げます。

 

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ディーゼルエンジンを動かす軽油、A重油

軽油や重油は、石油を精製して作られる石油製品です。原油から沸点の低い順に、LPガス、ガソリン、灯油、軽油などが抽出され、蒸留装置に残った油のうちの燃料成分を重油と呼んでいます。また、重油のなかでも流動性が高く軽油に近い性質のものはA重油と分類されています。

軽油やA重油の特長は、発熱量が高く、火力が強いことです。大きなものを動かしたり、大量のエネルギーを生み出したりする時の燃料に適しています。軽油のほとんどはディーゼルエンジンを搭載したトラックやバスの燃料に使われ、A重油は軽油より価格が安いことから、小型船舶のディーゼルエンジンの燃料や、工場、学校、ビルなどのボイラーの燃料として使われています。

 

低温下で流動性が悪化、エンストの原因に

ガソリンエンジンはガソリンに火種を使って点火します。これに対しディーゼルエンジンは、自己発火する温度まで上げた燃焼室に燃料を噴射することで一気に燃焼・膨張させるため、大きなエネルギーが得られます。しかし、軽油やA重油は、沸点の高い留分を含んでいるため、寒冷地で気温が氷点下に下がる屋外に車を停めておくと流動性が低下してしまいます。

軽油やA重油は、燃料供給ラインを通り燃料フィルターを通してエンジンの燃焼室に送られます。その時に流動性が悪くなると燃料供給ラインが詰まったり、燃料フィルターが目詰まりしてエンジンが始動しなくなることがあります。また、始動後でも出力低下、エンストなどを起こしやすくなります。
そのため軽油は、低温特性に応じてJISで5種類に分類され、地域や季節に対応した(低温特性を有する)軽油が市場で流通しています。

※A重油は硫黄分により2種類に分類されています。

 

結晶の成長を抑えて流動性を向上させる

軽油やA重油の流動性が悪くなる原因は、蝋のように固まりやすいパラフィンワックスが含まれているためです。

気温が低下すると、軽油やA重油に含まれる結晶性の高いノルマルパラフィン分(C10〜C30程度の炭化水素化合物)が析出し始め、ワックスの結晶が成長します。その結果、燃料油全体がシャーベット状になったり、結晶の隙間に油分を包み込んだゲル状となったりして、流動性が失われてしまうのです。従って流動性を良くするには、低温時にワックスの結晶を大きくしないことが重要です。その対策として、通常、燃料油の製造時に0・01〜0・06%程度の低温流動性向上剤が添加されています。

低温流動性向上剤がワックスの結晶化を抑制する仕組みは次の通りです。結晶化は似た者同士が寄り集まって起こることから、ワックスの結晶ができ始めた小さい種の段階で表面の性質を違うものにしなければなりません。低温流動性向上剤は構造上、ワックスとの親和性が高い炭化水素基とワックスとの親和性がない極性基の二つを併せ持っています。低温流動性向上剤を添加すると、ワックスと同じ構造を持つ低温流動性向上剤の炭化水素基がワックス結晶の表面にくっつき、極性基がワックスのさらなる結晶成長を阻害する役割を果たします。

こうして軽油やA重油に含まれるワックス結晶が微細な粒状結晶でとどまり、大きく成長しないことで、低温流動性が保たれるのです。

 

 

さまざまなニーズに対応する三洋化成の低温流動性向上剤

三洋化成は、1982年頃から低温流動性向上剤を提供してきました。当社の『キャリオール』シリーズには各種の軽油、A重油の適性に合わせたさまざまな製品があり、それぞれ優れた性能を発揮しています。主成分は、主鎖に長いメチレン基を持つエチレン-酢酸ビニル(EVA)系共重合体であり、低温流動性の向上に非常に効果的です。

今後は環境面でクリーンディーゼル燃料(低硫黄軽油)や天然由来原料を用いるバイオディーゼル燃料など、対象とする燃料油の種類が増えることも予想されます。三洋化成は燃料の多様化やお客様のニーズに合わせてさまざまな製品を提供していきます。

 

 

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