平素より格別のご高配をたまわり、厚くお礼申しあげます。2025年3月31日をもちまして、2024年度を終了いたしましたので、ここにその概況をご報告申しあげます。今後とも一層のご支援、ご協力をたまわりますようお願い申しあげます。
代表取締役社長
2024年度の事業環境について
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高による消費マインドの低下はあるものの雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな持ち直しが見られました。為替相場は円安進行後、米欧の利下げや日銀の利上げなどから円が急反発する場面もありましたが、金利差の縮小が限定的であったこと等もあり、年間を通して乱高下しながら小幅な円高となりました。また、原油価格は中東地域を巡る地政学リスク等により高止まりが続きました。世界経済は、米国景気は底堅く推移し、欧州景気は回復傾向である一方、中国は政策効果による一時的な持ち直しは見られたものの、不動産市況悪化の影響等により自律的な景気回復が遅れております。加えて、昨今の米国の関税政策の動向やロシア・ウクライナ情勢の長期化ならびに中東地域の不安定な状況が継続するなど、先行きは極めて不透明な状況にあります。
化学業界におきましては、中国の内需不振と供給過剰により中国製品が日本およびアジアマーケットに流入してきていることで価格競争が激化するなど、事業環境は不可逆的な変化に晒されております。
このような環境の下、当社は前連結会計年度において、『新中期経営計画2025』で掲げた構造改革に沿って、高吸水性樹脂事業及び中国における生産事業からの撤退を決定しました。当連結会計年度では、その決定に従って、三大雅精細化学品(南通)有限公司の持分譲渡を完了し、高吸水性樹脂事業から完全撤退するなど高付加価値事業への転換を図る事業ポートフォリオ改革は着実に進捗しております。また、『ものづくり大改革』として取組んでいる「サプライチェーン全体にわたるコスト削減および運転資本の圧縮」についても、目標を上回るペースで進捗しており、基盤事業の収益回復に寄与してきております。
2024年度の業績について
当連結会計年度の売上高は、高吸水性樹脂事業からの撤退などにより1,422億5千8百万円(前期比10.8%減)となりました。利益面では、先端半導体分野の好調に加え高付加価値製品の拡販や構造改革による収益性改善などにより営業利益は84億3千9百万円(前期比72.7%増)、経常利益は96億7千万円(前期比18.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は出資金評価損や事業構造改革費用を計上したことにより41億5千1百万円(前期は事業構造改革費用120億5千9百万円の計上などにより85億1百万円の損失)となりました。
なお、上記事業構造改革に関する損失は、前連結会計年度から複数年度にわたり総額200億円を見込んでおりましたが、前連結会計年度に約120億円、当連結会計年度は三大雅精細化学品(南通)有限公司の減損損失を含め約12億円を計上しております。
新中期経営計画2025について
新中期経営計画2025の最終年度にあたり、当社は『基盤事業の見直し』、『基盤事業からの展開』、そして『新たな成長軌道』といった取り組みを通じて収益力の強化につなげるとともに、外部環境の変化に柔軟に対応できるよう「事業ポートフォリオの高度化」を加速させることが重要な課題であると認識しています。次の収益の柱となる成長領域へのリソース投入を含め、重点的に取り組むべき事項を以下のとおり抽出しました。
「ありたい姿に向けた変革」を加速するためのシナリオとして、『基盤事業の見直し』については、市場ニーズに対応した差別化製品の開発により利益を拡大すべく、サプライチェーン全体の効率化を目的とする「ものづくり大改革」(ソフト面)の継続的推進と生産設備の統廃合・集約化に取り組む「生産設備改革」(ハード面)の新たな推進の両輪で、グループ全体での最適な生産体制を構築してまいります。また、基盤事業の収益性や競争力を強化するため、他社とのアライアンスを検討・推進してまいります。
『基盤事業からの展開』については、高付加価値製品群の拡充を目指し、注力テーマへのリソースを集中投入してまいります。特に、半導体分野における製品開発や拡販に向けたマーケティング活動を推進し、小規模高付加価値テーマの推進のため小型反応槽の導入を進めます。 『新たな成長軌道』については、人工タンパク質「シルクエラスチン」の米国事業化およびマーケティングの推進を図るほか、カーボンニュートラルやQOL(生活の質)向上を軸とした食と医療などの分野で新規ビジネスの事業化(匂いセンサー、ペプチド農業、陸上養殖、電池部材など)に向けた取り組みに注力してまいります。
その他の取り組みについては、研究開発力の強化に向けた新研究棟建設プランの具体化や、アメリカ・インド市場を中心としたグローバルマーケティングの推進、そして物流会社とのパートナー連携による効率的かつ持続可能な物流体制の構築を進めていきます。
また、これらの変革を支える活動として、2050年度のカーボンニュートラルに向けたCO₂排出削減のロードマップ策定のほかマテリアリティを中心に持続可能な事業基盤を支えるための取り組みも強化してまいります。
利益還元について
2024年度の期末配当につきましては、1株当たり85.0円(年間1株当たり170.0円)とさせていただきました。次期の中間配当ならびに期末配当につきましては、1株当たりそれぞれ85.0円(年間1株当たり170.0円)を予定しております。当社は、グループ収益力の向上により、将来に向かっての企業基盤強化を図りながら、株主の皆様への利益還元を充実させていくことを経営の重要課題と考えております。連結配当性向30%以上をめどに、中長期的な配当水準の向上を目指しております。
最後に、メッセージをお願いします。
当社は今後も、『経営方針』に掲げる“すべてのステークホルダーのワクワク”の実現に向けて、急速に変化する外部環境を踏まえながら、堅持すべき事項と変革すべき事項を的確に見極め、全社一丸となって取り組んでまいります。今後とも一層のご支援、ご協力をたまわりますようお願い申しあげます。