経営成績
当連結会計年度の売上高は、高吸水性樹脂事業からの撤退などにより1,422億5千8百万円(前期比10.8%減)となりました。利益面では、先端半導体分野の好調に加え高付加価値製品の拡販や構造改革による収益性改善などにより営業利益は84億3千9百万円(前期比72.7%増)、経常利益は96億7千万円(前期比18.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は出資金評価損や事業構造改革費用を計上したことにより41億5千1百万円(前期は事業構造改革費用120億5千9百万円の計上などにより85億1百万円の損失)となりました。
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高による消費マインドの低下はあるものの雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな持ち直しが見られました。為替相場は円安進行後、米欧の利下げや日銀の利上げなどから円が急反発する場面もありましたが、金利差の縮小が限定的であったこと等もあり、年間を通して乱高下しながら小幅な円高となりました。また、原油価格は中東地域を巡る地政学リスク等により高止まりが続きました。世界経済は、米国景気は底堅く推移し、欧州景気は回復傾向である一方、中国は政策効果による一時的な持ち直しは見られたものの、不動産市況悪化の影響等により自律的な景気回復が遅れております。加えて、昨今の米国の関税政策の動向やロシア・ウクライナ情勢の長期化ならびに中東地域の不安定な状況が継続するなど、先行きは極めて不透明な状況にあります。
化学業界におきましては、中国の内需不振と供給過剰により中国製品が日本およびアジアマーケットに流入してきていることで価格競争が激化するなど、事業環境は不可逆的な変化に晒されております。
このような環境の下、当社は前連結会計年度において、『新中期経営計画2025』で掲げた構造改革に沿って、高吸水性樹脂事業及び中国における生産事業からの撤退を決定しました。当連結会計年度では、その決定に従って、三大雅精細化学品(南通)有限公司の持分譲渡を完了し、高吸水性樹脂事業から完全撤退するなど高付加価値事業への転換を図る事業ポートフォリオ改革は着実に進捗しております。また、『ものづくり大改革』として取組んでいる「サプライチェーン全体にわたるコスト削減および運転資本の圧縮」についても、目標を上回るペースで進捗しており、基盤事業の収益回復に寄与してきております。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、高吸水性樹脂事業からの撤退などにより1,422億5千8百万円(前期比10.8%減)となりました。利益面では、先端半導体分野の好調に加え高付加価値製品の拡販や構造改革による収益性改善などにより営業利益は84億3千9百万円(前期比72.7%増)、経常利益は96億7千万円(前期比18.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は出資金評価損や事業構造改革費用を計上したことにより41億5千1百万円(前期は事業構造改革費用120億5千9百万円の計上などにより85億1百万円の損失)となりました。
なお、上記事業構造改革に関する損失は、前連結会計年度から複数年度にわたり総額200億円を見込んでおりましたが、前連結会計年度に約120億円、当連結会計年度は三大雅精細化学品(南通)有限公司の減損損失を含め約12億円を計上しております。
2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
売上高(百万円) | 144,757 | 162,526 | 174,973 | 159,510 | 142,258 |
営業利益(百万円) | 11,932 | 11,868 | 8,123 | 4,886 | 8,439 |
同売上高比率(%) | 8.2 | 7.3 | 4.6 | 3.1 | 5.9 |
経常利益(百万円) | 11,999 | 12,771 | 9,918 | 8,186 | 9,670 |
同売上高比率(%) | 8.3 | 7.9 | 5.7 | 5.1 | 4.0 |
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) | 7,282 | 6,699 | 5,684 | △8,501 | 4,151 |
同売上高比率(%) | 5.0 | 4.1 | 3.2 | △5.3 | 2.9 |
1株当たり当期純利益(円) | 330.34 | 303.76 | 257.57 | △384.99 | 187.79 |
自己資本当期純利益率(ROE)(%) | 5.4 | 4.7 | 3.9 | △6.0 | 3.0 |
総資産経常利益率(ROA)(%) | 6.4 | 6.5 | 4.9 | 4.0 | 5.1 |
海外売上高(百万円) | 63,567 | 69,903 | 76,378 | 70,802 | 58,183 |
同売上高比率(%) | 43.9 | 43.0 | 43.7 | 44.4 | 40.9 |
1株当たり配当(円) | 150.0 | 170.0 | 170.0 | 170.0 | 170.0 |
配当性向(%) | 45.4 | 56.0 | 66.0 | - | 90.5 |
財政状態
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ32億7千5百万円減少し、1,383億2百万円となりました。自己資本比率は、前連結会計年度末の67.6%から9.2ポイント増加し76.8%となりました。また、1株当たり純資産は、前連結会計年度末の6,295.31円から6,119.90円と175.41円減少しました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ294億5千2百万円減少し、1,763億6千6百万円となりました。流動資産は、受取手形及び売掛金が99億8百万円、商品及び製品が68億7千6百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて209億8千6百万円減少し、849億4千2百万円となりました。固定資産は、有形固定資産が53億3千5百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて84億6千5百万円減少し、914億2千3百万円となりました。
流動負債は、短期借入金が82億4千1百万円、買掛金が69億6千8百万円、未払金が39億1千万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて231億8千7百万円減少し、303億3千2百万円となりました。固定負債は、事業構造改革引当金が30億4千2百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて29億8千9百万円減少し、77億3千1百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ32億7千5百万円減少し、1,383億2百万円となりました。自己資本比率は、前連結会計年度末の67.6%から9.2ポイント増加し76.8%となりました。また、1株当たり純資産は、前連結会計年度末の6,295.31円から6,119.90円と175.41円減少しました。
2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
流動資産(百万円) | 89,340 | 93,764 | 97,324 | 105,929 | 84,942 |
固定資産(百万円) | 106,382 | 106,429 | 104,857 | 99,889 | 91,423 |
総資産(百万円) | 195,723 | 200,194 | 202,182 | 205,818 | 176,366 |
流動負債(百万円) | 46,222 | 47,904 | 46,938 | 53,519 | 30,332 |
固定負債(百万円) | 6,548 | 5,257 | 6,249 | 10,720 | 7,731 |
自己資本(百万円) | 140,474 | 144,479 | 146,067 | 139,037 | 135,385 |
自己資本比率(%) | 71,8 | 72.2 | 72.2 | 67.6 | 76.8 |
1株当たり純資産(円) | 6,371.77 | 6,549.60 | 6,617.11 | 6,295.31 | 6,119.90 |
研究開発費(百万円) | 5,384 | 5,650 | 5,691 | 5,222 | 5,158 |
設備投資額(百万円) | 10,073 | 9,847 | 12,033 | 8,649 | 6,663 |
減価償却費(百万円) | 9,569 | 9,533 | 10,083 | 10,686 | 9,500 |
従業員数(人) | 2,096 | 2,106 | 2,089 | 2,042 | 1,680 |
キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末残高と比較し31億7千7百万円減少し、240億1千万円となりました。
営業活動による資金の増加は、139億2千5百万円(前期は198億1千4百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益64億6千1百万円、減価償却費96億3千3百万円、売上債権の減少78億8千3百万円、棚卸資産の減少32億5千4百万円などによる資金の増加が、仕入債務の減少65億8千6百万円、事業構造改革に伴う支払額45億4千9百万円、法人税等の支払額25億1百万円などによる資金の減少を上回ったことによるものです。
投資活動による資金の減少は、50億7千9百万円(前期は62億6千4百万円の減少)となりました。これは、固定資産の取得に67億7千1百万円を支出したことなどによるものです。
営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた「フリーキャッシュ・フロー」は、88億4千6百万円の増加(前期は135億5千万円の増加)となりました。
財務活動による資金の減少は、118億9千5百万円(前期は40億6百万円の減少)となりました。これは、配当金の支払い37億6千万円、短期借入金の減少額83億7千1百万円による資金の減少などによるものです。
2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
22,300 | 11,328 | 10,852 | 19,814 | 13,925 |
投資活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
△12,498 | △11,704 | △10,172 | △6,264 | △5,079 |
財務活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
△4,146 | △5,979 | △2,336 | △4,006 | △11,895 |
現金・現金同等物 (百万円) |
23,647 | 18,171 | 17,042 | 27,188 | 24,010 |
次期の見通し
今後の見通しにつきましては、わが国経済は内需主導で緩やかな回復基調が継続すると見込まれます。一方、世界的には米国の関税政策の動向やロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東地域を巡る地政学リスク等による先行き不透明な状況が続くと予想されます。また、事業環境としても上記状況の他、中国における汎用石油化学品の過剰生産による競争激化に加え、原料価格動向や為替動向など予断を許さない状況が続くと想定されます。
このような環境の中、翌連結会計年度の連結業績見通しにつきましては、事業構造改革に伴う増益ならびに高付加価値製品の拡販等により売上高1,300億円(前期比8.6%減)、営業利益100億円(前期比18.5%増)、経常利益110億円(前期比13.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益80億円(前期比92.7%増)を予想しております。